畑から 2 |
’02.5.6 |
ゴールデンウィークになって、ここ茨城県も百姓仕事が佳境に入ってきた。畑も田んぼも皆あわただしい。ついこの前まで静かだった田畑に、機械の音が鳴り響く。トラクターに草刈り機。これも30年前にはなかった音。時代の変化と簡単にいってよいのか分からないが、私は仕方ないと思っている。今の農業にとって、机上で語ることより、やってみることがまず大事である。なんでもやってみることなしには理解できない。その上で、理想を目標にかえ目の前の階段を一歩一歩進むべきだと思う。
まわりくどい出だしで恐縮です。何が言いたいのかというと、今日はマルチフィルムの話。地面をおおうビニールのことでサランラップのでかいやつ。
いみじくも、有機農業を行うものとして、能書きをくどくどと語るより前に、もっと大きな視点で考えるべきことがある。業界はその使い方に口を出していないが、使う私にはとても抵抗がある。とくに、処分する時はどうしようかとおおいに悩む。でも、売ってナンボの私には、野菜の季節を早めたり伸ばしたりすることが、私の生活の質に直接か関わってくることもお分かりいただきたい。そこで理想と現実目標を環境問題などに照らして各自が模索することが必要となる。それはみな、違っていてしかたがない。
では、さっそくその威力と使い方についてお話しましょう。
まず、何のために使うのか? お店や畑で目にするものに、透明なものと有色(たいてい黒色)とある。共通する効果効能は保湿。つまり土の中の水分を保ち、乾燥害から守ること。そして、透明なものは日の光が地面を照らすので、土の中の温度が上昇して根の伸びが早まります。種を直接まいても苗を植えてもその後の生育が早くなるのです。一方有色は、雑草の抑制と思われています。それは光が入らないからです。ところがこれが落とし穴。私は常々こう言います。“素人は、満足に鍬が使えないのだから、有色のマルチは使わないこと。”なぜなら雑草は、季節になれば必ず発芽します。有色であっても植え付けた穴の周りから光が差し込んで、必ずそこから顔を出します。黒マルチの場合、高温になっているのは表面だけ。茎が伸び、数多草が茂ればマルチ全体を押し上げて、かまぼこのような形にふくれあがり、何の効果もありません。この雑草をマルチの穴に指を突っ込んで取ることのばかばかしいこと。この効果を出すには、土を細かく砕きマルチをぴったりとくっつけること。通常、農家ではトラクターとマルチを張る専用の機械で作業します。慣れない手つきでごつごつした土に、凸凹に黒マルチを張っても百害あって一利なしです。もし丁寧に作業できるのなら、地温の上昇による生育の促進を期待した透明なマルチの使用をお勧めいたします。これも当然ながら、ぴったりと土に密着させること。すると表面内側は大変高温になりますので、発芽直後の雑草が枯れてくれます。凸凹に張ったら雑草に温室を提供しているようなものです。この透明マルチの保温効果、天気のよい日の夕方に指を差し込んでみてください。日はかげってもかなり暖かさが続いています。
さて、このコーナーの本題であるおもしろい話。
雑草に耐えかねて、マルチを栽培途中で剥がそうとしている人がいます。剥がれるわけありませんね。植えた種や苗はすでに穴より大きくなっているのですから。赤ん坊に服を着せたり脱がしたりするようなわけにはいかないのです。一つ一つハサミで切ればハサミは泥だらけ、強引に脱がせば野菜が泥だらけになったり葉が折れたりしますね。そういう時は、不出来な自分の作業を責めてください。だいたい栽培失敗です。適正なマルチ選び(穴の間隔など)で適正な作物を適正な時期に適性管理すると、雑草より先に野菜が生育し雑草が頑張りだす頃、野菜がマルチの表面を覆って日陰を作り雑草にまさります。マルチ剥がしは、収穫が終わってから。
ちなみに、マルチの威力。あまり期待してはいけません。春に大根を蒔いて、一週間から10日の差が出ればいいほうです。まあ、それが大きいといえば大きな差になるのですが。